雑音と SNR
信号は雑音に勝っているか
淡い二本の横線が送信した二つのレベルで、中央の点線が判定しきい値です。棒の先の点一つひとつが雑音の加わった受信値で、SNR が高いと点は二つのレベルにぴったり寄り添い、しきい値できれいに分かれます。SNR を下げると点が散らばり、しきい値を越えて反対側へ渡った点は赤い誤りに変わります。
雑音は加わる
導線の中の電子は温度のせいで絶えず揺れ動き、その揺れがどの受信機にも小さなランダム電圧を生みます。そのため受信信号は、送信信号に雑音が加わった r(t) = s(t) + n(t) です。雑音を消し去ることはできないので、できるのは信号を雑音より十分に大きくして覆い隠すことだけです。
大事なのは比 ―― SNR
信号を大きくすると雑音も一緒に大きくなるチャネルでは、絶対的な強さだけを見ても何もわかりません。受信機がビットを見分けられるかどうかを決めるのは、信号電力と雑音電力の比 SNR = S/N です。信号電力が雑音電力よりずっと大きければ二つのレベルは大きく離れてはっきりし、雑音電力が信号電力に近づくと二つのレベルが重なって区別が崩れます。この比は普通デシベルで表し、SNR(dB) = 10 log₁₀(S/N) と書きます。
熱雑音と帯域幅
熱雑音の電力は N = k T B で、ボルツマン定数 k、絶対温度 T、そして受信機が取り込む帯域幅 B に比例します。帯域を広く開けるほど、それだけ多くの雑音が入ってくるということです。だから SNR を上げる道は二つあります。信号電力を大きくするか、必要な分だけに帯域を絞って雑音を減らすかです。そしてこの SNR が、一つのチャネルが運べる情報の絶対的な限界、つまりシャノン容量を決めます。
最初の画面に戻ると
SNR を下げると、二つのレベルにぴったり寄り添っていた受信値がしだいに散らばり、しきい値を越えてしまった値は赤い誤りになりました。SNR を再び上げると、値は二つのレベルへ集まり、金色ですっきりしました。その間、信号の絶対的な強さは画面のどこにも出てきませんでした。雑音について覚えておくことは一つです。読み取れるかどうかを決めるのは信号がどれだけ大きいかではなく、雑音よりどれだけ高く抜きん出ているか、つまり比 S/N です。
次のユニットで
雑音はランダムなので、ある瞬間の値を前もって知ることはできません。そのため雑音を扱うには確率の言葉が必要です。次のユニットでは、ランダムな信号を分布と平均、分散で記述する方法を見ます。釣鐘形の正規分布がなぜ雑音の基本的な姿なのか、平均電力とは何かが、その出発点です。