帯域幅とシンボル率
どこまで詰めて送り込めるか
淡い山の一つひとつがシンボルのパルスで、太い曲線はそれらのパルスをすべて足し合わせた受信波形です。シンボルレートを上げるとパルスの間隔は狭まりますが、パルスの幅は帯域幅で決まっているので変わりません。そのため Rs が 2B を超えると、パルスどうしが重なって受信波形がひと塊につぶれ、赤く変わります。
シンボルは時間を占める
シンボルを一つ送るには時間の区画 Ts が一つ必要で、1 秒間に送るシンボル数であるシンボルレートは Rs = 1/Ts です。速く送りたければ、区画を狭めてパルスをもっと詰めればよさそうに思えます。しかし、パルスをいくらでも詰めることはできません。パルスが短いほど、より広い周波数帯域を占めるからです。
ナイキスト ―― 帯域幅が天井を張る
この天井の高さを決めるのが、ナイキストの信号速度定理です。帯域幅が B のチャネルでは、1 秒間に最大 2B 個のシンボルまでしか、互いに干渉せずに送れません。シンボルレートをそれより上げると、隣のパルスが互いの時間区画へにじみ込み、受信機があるシンボルを読む瞬間に隣のシンボルが混ざります。このにじみを符号間干渉(ISI)といい、パルスがひと塊につぶれてしまうと、ビットを取り戻すすべはありません。
より多くのビットはシンボルを重く
シンボルレートが 2B で頭打ちになる以上、同じ帯域でビットを増やす道は、一つのシンボルにより多くのビットを載せることしかありません。M 値方式ならシンボルあたり log₂ M ビットを運ぶので、ビットレートは Rb = Rs log₂ M となります。1 ヘルツあたりの効率 η = Rb/B は、最大 2 log₂ M まで上がります。ただし M を大きくするほど信号点が詰まって、より大きな信号対雑音比が必要になり、その先にはシャノンが定めた越えられない天井があります。
最初の画面に戻ると
シンボルレートを上げるとパルスはしだいに近づき、Rs が 2B を超えた瞬間に重なり合って、受信波形がひと塊につぶれた赤い ISI になりました。2B のすぐ下ではパルスがはっきり分かれたまま帯域を余さず使って金色になり、下げすぎるとパルスの間が空いて帯域を無駄にする橙色になりました。覚えておくことは一つです。帯域幅がシンボルレートの天井 2B を決めるので、より多くのビットは、シンボルを速く送ることではなく重くすることで得られます。
次のユニットで
シンボルを重くするときも、ISI を避けるときも、繰り返し顔を出した量が一つあります。信号対雑音比、SNR です。次のユニットでは、まずその雑音の正体を見ます。熱雑音がどこから生じるのか、信号電力と雑音電力の比が何を意味するのか、そしてその比がなぜ通信の限界を決めるのかを順にたどります。