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高校2~高校3年生 (16-18歳)

生物 遺伝子発現調節 わかりやすく

Gene Regulation

ヒトの体細胞はどれも同じ遺伝子をもっていますが、そのうちどの遺伝子をはたらかせるかによって、皮膚の細胞にも神経の細胞にもなります。 大腸菌は lac オペロンで乳糖(ラクトース)分解酵素の合成を調節しています。乳糖がなければリプレッサーがオペレーターをふさぎ、乳糖があってもブドウ糖がいっしょにあると転写はごくわずかしか起こりません。 真核生物は、クロマチンがほどける段階から転写、mRNA の加工、翻訳、翻訳後のタンパク質の修飾まで、いくつもの段階で発現を調節しています。 図では、乳糖とブドウ糖のボタンで四つの組み合わせをつくると、リプレッサーと CAP がついたり離れたりするのに合わせて、転写の矢印が消えたり、薄くなったり、濃くなったりするようすを見ることができます。

同じ DNA から別の細胞ができるわけ

🤔 皮膚の細胞と神経の細胞は何がちがうのか
①ヒトの体細胞はすべて一つの受精卵から生じたので、タンパク質をコードする約 2 万個の遺伝子を同じようにもつ
②それでも皮膚の細胞はケラチンを多くつくり、赤血球になる細胞はヘモグロビンをつくる
③ちがいはもっている遺伝子ではなく、細胞ごとにどの遺伝子をいつ、どれだけ発現させるかにある
④必要な遺伝子だけを選んで発現させるこのしくみを、遺伝子発現の調節という
⑤発現する遺伝子の組み合わせが定まり、細胞が決まった形とはたらきをもつようになる過程が細胞の分化である

原核生物の調節:lac オペロン

🧬 大腸菌が乳糖分解酵素をつくる条件
①大腸菌はまずブドウ糖をエネルギー源に使い、乳糖はブドウ糖がなくなってから使う
②乳糖がないと、調節遺伝子からつくられたリプレッサーがオペレーターに結合し、RNA ポリメラーゼは構造遺伝子を転写できない
③乳糖が入ってくると、乳糖からできる物質(アロラクトース)がリプレッサーに結合して形を変え、リプレッサーはオペレーターから離れる
④それでもブドウ糖がいっしょにあると cAMP の濃度が低く、CAP がプロモーターの手前に結合できないので、転写はごくわずかしか起こらない
⑤乳糖があってブドウ糖がないときにはじめて、cAMP-CAP 複合体が RNA ポリメラーゼの結合を助け、乳糖分解酵素がさかんにつくられる
lac オペロンがさかんに転写される条件
乳糖あり + ブドウ糖なし → リプレッサーが離れる + cAMP-CAP が結合 → 転写 ON
乳糖は抑制を解き、ブドウ糖がないことで CAP が転写を助ける。二つの条件がそろってはじめて酵素が多くつくられる

lac オペロンの状態表

乳糖とブドウ糖の組み合わせと発現
乳糖ブドウ糖lac オペロン理由
××OFF乳糖がないのでリプレッサーがオペレーターに結合している(CAP が結合しても転写は止まる)
×○OFF乳糖がないのでリプレッサーがオペレーターをふさぎ、ブドウ糖のため CAP も結合しない
○○微弱リプレッサーは離れたが CAP が結合できず、転写はごくわずか
○×ONリプレッサーが離れ、cAMP-CAP が転写を助ける

lac オペロンをつくる部分

オペロンの構成

lac オペロンと調節遺伝子のはたらき
調節遺伝子
オペロンの外にあり、常に発現してリプレッサーをつくりつづける
リプレッサーをコードする
プロモーター
RNA ポリメラーゼがここに結合して転写を始める。すぐ手前に CAP が結合する場所がある
RNA ポリメラーゼが結合する場所
オペレーター
リプレッサーが結合していると RNA ポリメラーゼが先へ進めず、転写が止まる
リプレッサーが結合する場所
構造遺伝子(Z・Y・A)
Z = β-ガラクトシダーゼ(乳糖の分解)、Y = パーミアーゼ(乳糖の取りこみ)、A = アセチルトランスフェラーゼ。三つは一つの mRNA としていっしょに転写される
乳糖の利用に必要な酵素をコードする

真核生物の調節:いくつもの段階

🏗️ 原核生物と真核生物の調節のちがい
①原核生物は関連する遺伝子をいくつも一つのオペロンにまとめ、いっせいに発現を切りかえる
②真核生物は遺伝子ごとにプロモーターがあり、複数の調節タンパク質(転写因子)が組み合わさって転写を調節する
③転写の前にはクロマチンがどれだけほどけているかが、転写の後には mRNA をどう加工し、どれだけ長く残すかが発現量を変える
④どの段階でも調節できるので、多細胞生物は一つのゲノムから数百種類の細胞をつくる
転写の段階での調節
転写因子が調節領域に結合 → RNA ポリメラーゼがプロモーターに結合 → 転写開始
細胞ごとにもつ転写因子の組み合わせがちがうので、同じ遺伝子でもある細胞では発現し、別の細胞では発現しない

調節の段階

真核生物の遺伝子発現を調節する段階
転写前
クロマチンが凝縮すると転写因子が DNA に近づけず、ほどけると転写が起こりやすくなる
DNA のメチル化、ヒストンの修飾
転写
発現量を決めるもっとも重要な段階で、遺伝子ごとに転写因子の組み合わせがちがう
転写因子、エンハンサーなどの調節領域
転写後
イントロンを除き、エキソンのつなぎ方を変えることで、一つの遺伝子から複数のタンパク質ができる
mRNA の加工(選択的スプライシング)
翻訳
mRNA がどれだけ長く残るかで、タンパク質の生産量が変わる
miRNA による翻訳の抑制と mRNA の分解
翻訳後
タンパク質をはたらかせる時期や分解する時期を調節する
タンパク質のリン酸化、ユビキチンの結合
エピジェネティクス
DNA のメチル化、ヒストンのアセチル化 → 塩基配列はそのままで発現だけが変わる
こうした目印は細胞分裂の後も娘細胞に受けつがれ、環境によって変わることもある

例題と過去問で確認

例題 1
大腸菌の lac オペロンで乳糖分解酵素がもっとも多くつくられる条件を、乳糖とブドウ糖の有無で答えよ。
1
乳糖があれば、リプレッサーがオペレーターから離れ、RNA ポリメラーゼが構造遺伝子へ進める。
2
ブドウ糖がいっしょにあると cAMP の濃度が低く、CAP がプロモーターの手前に結合できないので、リプレッサーが離れていても転写はごくわずかである。
▸ 乳糖あり + ブドウ糖なし
乳糖は抑制を解く条件、ブドウ糖がないことは転写を助ける条件である。図で乳糖 ○、ブドウ糖 × にすると CAP があらわれ、転写の矢印がもっとも濃くなる。
例題 2
ブドウ糖のない培地に乳糖を加えた。lac オペロンではどのような順に事が起こって転写が始まるか。
1
乳糖を加える前は、リプレッサーがオペレーターに結合していて、RNA ポリメラーゼは構造遺伝子を転写できない。
2
乳糖が入ると、乳糖からできる物質がリプレッサーに結合して形を変え、リプレッサーがオペレーターから離れる。ブドウ糖がないので cAMP-CAP も結合し、RNA ポリメラーゼが構造遺伝子をさかんに転写する。
▸ 乳糖からできる物質がリプレッサーに結合 → リプレッサーがオペレーターから離れる → cAMP-CAP の助けで転写開始
リプレッサーは転写が起こるかどうかを、CAP は転写がどれだけ強く起こるかを受けもつ。lac オペロンが二つの信号を同時に読みとるのはそのためである。
韓国修能 類題
原核生物の lac オペロンについての説明として正しいものはどれか。
①ブドウ糖が豊富にあると、乳糖分解酵素が多くつくられる
②オペレーターは RNA ポリメラーゼが結合する領域である
③リプレッサーは調節遺伝子からつくられる
④乳糖がないとき、構造遺伝子の転写がさかんである
⑤真核生物もふつう一つのオペロンで複数の遺伝子をまとめて調節する
▸ ③ リプレッサーは調節遺伝子からつくられる
1
調節遺伝子は常に発現してリプレッサーをつくり、このリプレッサーが乳糖のないときにオペレーターに結合する。
2
ブドウ糖が多いと CAP が結合できず酵素はほとんどつくられない(①)。RNA ポリメラーゼが結合するのはプロモーターであり(②)、乳糖がないと転写は抑えられ(④)、真核生物はふつう遺伝子ごとにプロモーターをもつ(⑤)。

まとめ

遺伝子発現調節の要点
同じゲノム + 細胞ごとにちがう発現 = 細胞の分化
どの細胞も同じゲノムをもちながら、それぞれちがう細胞になる理由である
🎯 試験ポイント
①lac オペロンはプロモーター、オペレーター、構造遺伝子からなり、調節遺伝子はオペロンの外にある
②乳糖がないとリプレッサーがオペレーターに結合し、転写は起こらない
③乳糖が入ると、乳糖からできる物質がリプレッサーに結合し、リプレッサーがオペレーターから離れる
④ブドウ糖がいっしょにあると CAP が結合できず転写はごくわずかで、乳糖だけがあるときに転写がもっともさかんになる
⑤真核生物は転写因子の組み合わせで転写を調節し、エピジェネティクスは塩基配列を変えずに発現を変える

最終更新

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