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高校2~高校3年生 (16-18歳)

生物 バイオテクノロジー わかりやすく

Biotechnology

生物工学では、制限酵素で DNA を望みの位置で切り、DNA リガーゼで断片をつなぎ、PCR で目的の DNA 断片を何度も複製します。 制限酵素は、どちらの鎖から読んでも同じになる回文構造の塩基配列を見分けて二本の鎖を食いちがいに切り、付着末端を残します。PCR は変性、プライマーの結合、伸長の一サイクルごとに DNA を二倍にふやします。 目的の遺伝子をプラスミドのようなベクターに入れ、大腸菌のような宿主で発現させると、インスリンのようなタンパク質を大量に得られます。 図では、EcoRI が GAATTC を切って二つの断片に AATT が一本鎖で残る過程と、PCR のサイクルがふえると DNA 分子の数が対数目盛りで直線的にふえるようすを見ることができます。

遺伝子を切り、つなぎ、ふやす

💡 生物工学の基本の道具
①制限酵素:DNA の特定の塩基配列を見分けてその位置を正確に切る分子のはさみ
②DNA リガーゼ:切れた DNA 断片の糖とリン酸の骨格をつなぐ分子ののり
③PCR(ポリメラーゼ連鎖反応):目的の DNA 断片だけを選んで数百万倍以上に複製する技術
④ウイルス感染の検査では、試料中のウイルスの遺伝物質を PCR でふやして見つけ出す
⑤これらの道具でつくった組換え DNA を使い、インスリンや成長ホルモンのようなタンパク質を大量につくる

制限酵素:分子のはさみ

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🔍 制限酵素の切り方
①EcoRI が見分ける配列は 5'-GAATTC-3' で、相補鎖も 5' から 3' へ読むと GAATTC になる回文構造である
②EcoRI は二本の鎖のどちらも G と A のあいだを切るので、切る位置が二本の鎖で食いちがう
③その結果、二つの断片の末端に AATT の四塩基が一本鎖でつき出した付着末端ができる
④同じ酵素で切ったほかの DNA も同じ付着末端をもつので、二つの断片は相補的に結合して簡単につながる
⑤二本の鎖を同じ位置で切り、一本鎖が残らない平滑末端をつくる制限酵素もある

PCR:目的の DNA だけをふやす

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PCR でふえる DNA
DNA 分子の数 = はじめの分子の数 × 2n(n = サイクル数)
理論上、1 分子を 30 サイクルふやすと約 10 億個(2³⁰ ≈ 1.07 × 10⁹)になる
💡 PCR の三つの段階
①変性(約 94 °C):高温で二本鎖 DNA の水素結合を切り、一本ずつに分ける
②プライマーの結合(約 55 °C):温度を下げると、ふやしたい区間の両端にプライマーが相補的に結合する
③伸長(約 72 °C):高温でも変性しない DNA ポリメラーゼが、プライマーにつづけて新しい鎖を合成する
④この三段階が一サイクルで、サイクルごとに DNA が二倍になり、ふつう 25 ~ 35 回くり返す
⑤RNA ウイルスを調べるときは、まず逆転写酵素で RNA を cDNA に変えてから PCR でふやす

遺伝子組換えとその利用

遺伝子組換えの過程
同じ制限酵素で遺伝子とプラスミドを切る → DNA リガーゼでつなぐ → 大腸菌に入れる(形質転換)→ 組換えプラスミドをもつ大腸菌を選ぶ
目的の遺伝子をほかの生物に入れ、その生物に遺伝子の産物をつくらせる
📐 中心となる技術と利用
①ベクター:遺伝子を宿主細胞へ運ぶ運び手で、細菌の中で自分で複製するプラスミドが代表的である
②形質転換:外から入った遺伝子をもつ細菌がその遺伝子を発現し、新しい形質を示す
③ヒトのインスリン遺伝子を入れた大腸菌は、ヒトのインスリンを大量につくり、糖尿病の治療に使われる
④ゲル電気泳動:負の電荷をもつ DNA 断片はゲルの中を+極の方へ移動し、小さい断片ほど遠くまで進む
⑤DNA 鑑定:人によってくり返し回数のちがう短い反復配列(STR)をくらべて個人を見分ける

例題と過去問で確認

例題 1
DNA 1 分子を PCR で 10 サイクル増幅すると、理論上いくつになるか。
1
PCR は一サイクルごとに DNA が二倍になるので、n サイクル後には 2n 倍になる。
2
10 サイクルなら 210 = 1024 なので、1 分子が 1024 個になる。
▸ 210 = 1024 個
グラフの縦軸は対数目盛りなので、2n は直線に見える。サイクルが 10 回ふえるごとに約 1000 倍になり、20 サイクルで約 100 万個、30 サイクルで約 10 億個になる。
例題 2
異なる二つの DNA を同じ制限酵素で切って付着末端をつくったあと、二つの断片を一つにつなぐのに使う酵素は何か。
1
同じ制限酵素で切ると、二つの断片の付着末端の塩基配列はたがいに相補的になる。
2
二つの末端が相補的に結合したあと、DNA リガーゼが糖とリン酸の骨格をつないで一つの組換え DNA を完成させる。
▸ DNA リガーゼ
制限酵素がはさみなら、DNA リガーゼはのりである。プラスミドに目的の遺伝子を組みこむときには、この二つをいっしょに使う。
定期テスト類題
生物工学の技術についての説明として正しいものはどれか。
①PCR の伸長の段階の温度は約 94 °C である。
②制限酵素は DNA をどの位置でも切る。
③PCR を n サイクル行うと、理論上 DNA は 2n 倍にふえる。
④ゲル電気泳動では大きい DNA 断片ほど速く移動する。
⑤DNA リガーゼは DNA を切る酵素である。
▸ ③ PCR を n サイクル行うと、理論上 DNA は 2n 倍にふえる。
1
PCR は変性、プライマーの結合、伸長を一サイクルとしてくり返し、サイクルごとに DNA が二倍になるので、n サイクル後には 2n 倍になる。
2
伸長の温度は約 72 °C で(①)、制限酵素は特定の回文配列だけを切り(②)、電気泳動では小さい断片ほど速く移動し(④)、DNA リガーゼは DNA をつなぐ酵素である(⑤)。

総まとめ

PCR による増幅
n サイクル → 2n 倍(n = サイクル数)
理論上、20 サイクルで約 100 万倍、30 サイクルで約 10 億倍
🎯 試験ポイント
①PCR は変性(約 94 °C)→ プライマーの結合(約 55 °C)→ 伸長(約 72 °C)を一サイクルとしてくり返す
②理論上、n サイクル後に DNA は 2^n 倍になる
③制限酵素は回文構造の特定の配列を見分けて切り、付着末端や平滑末端をつくる
④遺伝子組換えには制限酵素、DNA リガーゼ、ベクター(プラスミド)が使われる
⑤ゲル電気泳動では小さい DNA 断片ほど遠くまで移動し、DNA 鑑定は STR のくり返し回数のちがいで個人を見分ける

最終更新

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